30歳で電機メーカーから生産技術エンジニアに転職した話——年収・やりがい・後悔、全部正直に書く
目次
「30歳での転職って、やっぱりリスクあるよな…」
転職を考えていた当時、私は何度もこの言葉を頭の中で繰り返していました。 新卒から7年。電機メーカーで電子回路設計を3年、その後社内異動で生産技術を4年やってきた。それなりに専門性もついた。でも、何かが違う——そのモヤモヤがずっと消えなかったんです。
結果から言うと、転職して良かった。 でも「楽になった」わけじゃない。むしろ最初の1〜2年は正直しんどかった。
この記事では、30歳で転職を決意した理由から、準備したこと、転職後のリアルまで、包み隠さず書いていきます。同じように悩んでいるエンジニアの参考になれば嬉しいです。
転職前:電機メーカーでの7年間
新卒で入ったのは電機メーカー。最初の3年間は電子回路設計部門に所属し、基板設計や回路解析に従事しました。
オシロスコープやロジアナを毎日触り、「なぜこの波形が歪むのか」を追いかける作業は純粋に面白かった。回路の動作原理を体で覚えた3年間でした。
その後、社内異動で生産技術部門へ。PLCを使った設備制御や電気回路設計を担当し、現場のリアルを知りました。設計と現場、両方の視点を持てたことは今でも財産だと思っています。
でも、4年目を過ぎたあたりから、あることが気になり始めました。
転職を考え始めたきっかけ:「年収」と「スケール感」の2つ
きっかけ①:年収・待遇への不満
正直に言います。お金のことは、かなり大きかったです。
20代のうちは「まだ修行中だから」と自分を納得させられました。でも30歳が近づいて、同期や同世代の話を聞くと、明らかに市場とのギャップを感じるようになった。
資格の勉強(電験三種)を続けながら「この会社で資格手当はどれくらいつくんだろう」と調べたとき、正直がっかりしました。頑張りが評価に直結しにくい構造、というのが肌でわかってきた時期でした。
きっかけ②:「もっと大きな設備・現場に関わりたい」という渇望
これがもう一つの、ある意味より根本的なきっかけです。
生産技術に異動してから、設備制御や自動化の面白さを知りました。でも前職の現場は規模が限られていて、「もっと複雑なシステムを動かしたい」という気持ちがどんどん強くなっていった。
複数のロボットが連携して動く自動ライン、センサーと制御が緻密に絡み合った搬送システム——そういった高度に自動化された現場に関わりたかったんです。回路設計の知識もある、生産技術の経験もある。それを活かせる、もっと本格的なフィールドに行きたい、と。
この2つが重なって、「転職しよう」と決断しました。
転職活動で準備したこと
資格を「武器」として整理した
電験三種は、転職活動の前にすでに取得していました。
当時は「とりあえずキャリアアップのため」くらいの気持ちで取っていましたが、転職活動ではこれが想像以上に効きました。
生産技術・設備エンジニアの求人では、電験の保有者を優遇するケースが少なくない。特に大きな工場を持つメーカーにとって、電験三種は「即戦力の証明」になります。
資格の勉強をしていた過去の自分に、少し感謝しました。
「基板屋が現場に来た」という文脈で売り込んだ
職務経歴書で意識したのは、回路設計の知識 × 生産技術の実務経験という組み合わせを前面に出すことです。
「回路設計ができてノイズ対策もわかる」「かつ生産現場でPLC制御の実務もやっていた」——この両方を持っているエンジニアは、意外と少ない。現場の電気屋さんはシーケンスには強いけど基板レベルの話に弱く、設計屋は現場の泥臭さを知らない。その境界を跨げることが、自分の一番の差別化ポイントでした。
エージェントはDODAを使った
転職エージェントはDODAに登録しました。求人数は多く、選択肢という意味では十分でした。ただ、担当者は若い方で、製造業の現場事情にはあまり詳しくない印象でした。
エージェントに現場の細かいニュアンスを期待するのは難しいと感じたので、求人情報の収集ツールとして割り切って使うのが正解だと思います。職種や業界の判断は自分でする、という前提で活用するのがおすすめです。
転職後のリアル:良かったこと・しんどかったこと
転職の規模感を先に書いておくと、中小企業から上場企業への転職でした。これが後述する待遇面の変化に大きく影響しています。
良かった①:仕事のスケールが、想像以上に大きくなった
これは本当に良かった。
前職の生産技術でも設備制御はやっていましたが、転職後は関わる自動化のレベルが全然違いました。複数のロボットが連携して動く自動ライン、センサーと制御が緻密に絡み合った搬送システム——そういった本格的な自動化設備の設計・導入に携われるようになりました。
自分が関わった設備が稼働して、大量の製品を生み出す瞬間——あの達成感は、前職では味わえなかったものです。
良かった②:有休が圧倒的に取りやすくなった
地味に聞こえるかもしれませんが、これが日常のQOLにかなり効いています。
前職(中小企業)では、有休を取るのにまず申請用紙を印刷して、上司のところへ判をもらいに行くという文化がありました。「申請しに行く」という行為自体に、なんとなく気を使う空気がある。結果、有休を取ること自体をためらうことも多かった。
転職後(上場企業)は、パソコンの勤怠システムから数クリックで申請が完了します。承認も上司がシステム上でポチっとするだけ。申請のハードルが下がったことで、当たり前のように有休を使えるようになりました。
制度の話だけじゃなく、「有休を取ることへの空気感」が全然違う。上場企業ならではのコンプライアンス意識の高さが、こういうところにも出ていると感じています。
良かった③:残業に対する考え方が変わった
これも中小→上場の変化として大きかった点です。
前職では「残業は2時間はしましょう」という、今思えば不思議な指示がありました。帰れる状況でも帰りにくい空気があった。残業代は出るものの、時間を使うこと自体が美徳とされているような文化でした。
転職後は真逆で、「無駄な残業はするな」という方針が明確です。やることが終わったら帰る、それが当たり前。残業代はきちんと出る上に、時間の使い方まで評価される。生産性に対する考え方が、根本から違いました。
しんどかった①:スケールアップに伴う責任とプレッシャー
生産技術の経験はあったとはいえ、前職とはスケールが全然違いました。
扱う設備の規模、関わるステークホルダーの数、求められるスピード——すべてが一回り以上大きい。「生産技術は経験済みのはず」という周囲の期待値が、逆にプレッシャーになることもありました。
即戦力として入った分、「わかりません」と言いにくい空気があって、最初の半年はひたすら食らいついていた記憶があります。
しんどかった②:「自社製品への深い知識」がリセットされた
これは転職して初めて気づいた、盲点のデメリットです。
前職では設計部門出身という経歴が、生産技術の仕事でも大きな武器になっていました。自社製品の回路構成や設計思想を熟知しているから、新製品の立ち上げ時に「これは製品側の不具合か、設備側の問題か」の切り分けが素早くできる。生産技術の上司から頼られたり、質問を受けたりすることも多かった。
転職するとそれがまるごとゼロになります。
新しい職場では当然、製品のことを何も知らない状態からのスタートです。トラブルが起きても「製品の仕様がそもそもどうなっているのか」がわからない。前職では数秒で判断できていたことが、調査に時間がかかるようになりました。
「自分、前の職場では結構できてたんだな」と、失って初めて気づいた強みでした。この感覚は、転職を考えている人にはぜひ頭に入れておいてほしいことの一つです。
30歳転職を振り返って思うこと
30歳での転職は、早くも遅くもない、ちょうどいいタイミングだったと今は思います。
20代のうちに基礎的な専門性(基板・電気の知識)を積んだから、転職先でも即戦力として見てもらえた。逆に35歳、40歳まで待っていたら、「変わり身が利かない人」というレッテルを貼られるリスクがあったかもしれない。
「転職はリスク」というのは半分本当で、半分嘘だと思います。現状維持にも、じわじわとしたリスクがある。私の場合は、変わらないことの方がリスクが大きかった。
もし今、転職を迷っているエンジニアの方がいたら、一つだけ聞いてみてください。
「5年後も今の仕事を続けていて、納得できる自分がいますか?」
その答えが「NO」に近いなら、動き始める価値はあると思います。
まとめ
| 転職前 | 転職後 | |
|---|---|---|
| 仕事内容 | 回路設計3年→生産技術4年 | 生産設備の設計・制御・保全 |
| 仕事のスケール | 小〜中規模の現場 | ロボット自動ラインなど高度な自動化設備 |
| 活きた強み | — | 回路設計知識×生産技術経験×電験三種 |
| しんどかったこと | モヤモヤの蓄積・待遇への不満 | スケールアップに伴う責任とプレッシャー |
転職は「ゴール」じゃなくて「スタート」です。転職してからが、本当の勝負でした。
この記事が、同じように悩んでいるエンジニアの背中を少し押せたら嬉しいです。
転職活動の具体的な進め方(エージェントの選び方・職務経歴書の書き方)については、また別の記事で詳しく書こうと思います。
筆者:TKappy
関西在住の37歳、現役生産技術エンジニア。現場のトラブル対応からITスキルの活用まで、実体験に基づいた技術情報を発信中。 詳しく見る