三菱PLCとキーエンスPLC——現役生産技術エンジニアが現場目線で使い分けを解説

「三菱とキーエンス、結局どっちがいいの?」

PLCの選定で悩んだことがある方なら、一度は考えたことがあるはずです。

私は生産技術エンジニアとして10年以上、三菱・キーエンス両方のPLCを現場で使ってきました。職場では三菱がメインですが、個人的にはキーエンス派です。

この記事では、その理由を含めて現場目線でのリアルな比較をお伝えします。カタログスペックではなく、実際に使ってきた経験をもとに書きます。


1. まず結論から

三菱PLC キーエンスPLC
現場での普及率 ◎ 業界標準 ○ 増加傾向
プログラミングのしやすさ ○ 慣れれば快適 ◎ 直感的で見やすい
トラブルシューティング ○ 情報が豊富 ◎ 画面が見やすく診断しやすい
導入コスト ◎ 比較的安価 △ やや高め
保守部品の入手 ◎ どこでも手に入る ○ 入手可能だが選択肢少なめ
扱える人材の多さ ◎ ベテランが多い △ まだ少ない
納期安定性 △ 半導体不足時は半年待ちも ○ 既存取引先は優先対応
営業サポート △ 積極的ではない ◎ 情報提供・提案が手厚い
通信規格のオープン性 △ CC-Linkなど独自規格中心 ◎ EtherCAT・EtherNet/IP標準搭載

既存設備の更新・社内標準化 → 三菱 新規ライン・プログラミング効率重視 → キーエンス


2. 三菱PLCの特徴

業界標準の安心感

日本の製造業では三菱PLCが長年にわたって業界標準として使われてきました。そのため:

  • 扱えるエンジニアが多い:ベテランも若手も三菱を知っている
  • 情報が豊富:ネットや書籍で情報を探しやすい
  • 保守部品の入手が容易:全国どこでも手に入る

現場で三菱が選ばれる本当の理由

カタログスペックより、現場でもっと現実的な理由があります。

過去資産の流用ができるというのが大きいです。既存設備のプログラムを新設備に流用したり、社内で蓄積されたラダー図の資産をそのまま使えたりする。新しいPLCに乗り換えると、この資産がすべてリセットされてしまいます。

社内で扱える人が多いというのも重要です。私の職場でも、ベテランのほとんどが三菱を使い続けてきた経験を持っています。新しいPLCを導入すると教育コストがかかる。これが「なんとなく三菱でいいか」につながっている現実があります。

三菱PLCのデメリット

  • プログラミング画面がやや古い:GX Works3になって改善されましたが、キーエンスと比べると直感性で劣る印象
  • トラブル時のモニタリングが見づらい:デバイスの状態を確認するのに手間がかかることがある
  • 納期問題:半導体不足の影響を大きく受けやすく、半年待ちになるケースもありました。設備の納期が厳しい案件では大きなリスクになります
  • 営業サポートが薄い:三菱の営業担当が現場に来ることはほとんどありません。新製品情報などは自分から取りに行く必要があります
  • 通信規格が独自中心:CC-Linkなど独自規格が中心で、国際標準規格への対応はキーエンスより後れを取っている印象

3. キーエンスPLCの特徴

UIの直感性とデバッグ機能

キーエンスPLC(KVシリーズ)の一番の強みは、プログラミングソフト(KV STUDIO)の直感的なUIです。

コメントが表示されやすく、ラダー図全体の見通しが良い。初めてプログラムを見る人でも、三菱より理解しやすいと感じます。さらにデバッグ機能が使いやすく、どのデバイスがON/OFFしているかがひと目でわかる。問題箇所の特定が素早くできます。

トラブルシューティングのしやすさが抜群

個人的にキーエンスを好きな最大の理由がこれです。

トラブル発生時のモニタリング画面の見やすさが三菱と比べて明らかに優れていて、問題の切り分けが素早くできます。現場でトラブルが起きたとき、原因を素早く特定できるかどうかは生産への影響に直結します。この点でキーエンスは非常に優秀です。

営業サポートの手厚さ

これは意外と見落とされがちなポイントですが、キーエンスの営業サポートは非常に積極的です。

新製品情報や型式変更の提案など、こちらから動かなくても情報が入ってきます。担当者が定期的に訪問してくれるので、最新情報を常にキャッチできます。三菱の営業担当には1回しか会ったことがない私にとって、この差は非常に大きいと感じています。

半導体不足時の供給安定性

半導体不足が深刻だった時期、三菱PLCは半年待ちもざらでした。一方キーエンスは、既存取引先への即納対応を優先していたという話を営業担当から聞いたことがあります。型式変更の提案なども積極的に行ってくれたそうです。

ただし**「一見さんは後回し」**とのことで、普段からの取引関係を築いておくことが重要です。いざというときに頼れるかどうかは、日頃の関係次第だと実感しています。

EtherCAT・EtherNet/IPへの積極対応

キーエンスの最新機種KV-XシリーズはEtherCATとEtherNet/IPをCPUに標準搭載しています。この2つは世界中で使われる国際標準規格です。三菱のCC-Linkのような独自規格ではなく、世界中の機器と繋がれるオープンな設計になっています。

さらにOPC UAにも対応し、18メーカー・50シリーズ以上の他社機器をケーブルをつないで機種を選ぶだけで設定完了できる「Universal Library」も搭載しました。

この戦略が意味することは2つです。

① 顧客を囲い込まない安心感 オープン規格を採用することで「キーエンスに縛られる」という不安を払拭しています。新規ライン導入の心理的ハードルが下がります。

② スマートファクトリー・IoT時代への備え 製造業のデジタル化が進むほど、オープンな通信規格への対応が重要になります。この点でキーエンスは三菱より先を行っている印象です。

豊富な命令語

キーエンスは命令語の種類が豊富で、複雑な処理を少ないステップで書けることがあります。特にデータ処理や文字列操作が得意です。

キーエンスPLCのデメリット

  • 導入コストがやや高い:ハード・ソフトともに三菱より割高な印象
  • 扱えるエンジニアがまだ少ない:特にベテラン層は三菱経験者が多く、キーエンスに不慣れな場合がある
  • 過去資産が使えない:三菱から乗り換える場合、既存プログラムの流用ができない
  • デバイス番号の仕様が独特:入力・出力デバイスがどちらも初期設定で「R」になっており、三菱(X/Y)に慣れた人には最初違和感があります。またデバイス番号が000〜015の次が100になる仕様も、三菱経験者には「気持ち悪い」と感じる部分です。慣れれば問題ないですが、三菱からの乗り換え時には注意が必要です

4. 現場での選定基準

10年以上の経験から、私が実践している選定の考え方を紹介します。

三菱を選ぶケース

  • 既存設備の更新・増設:過去資産の流用が最大のメリット
  • 社内標準が三菱の場合:教育コスト・保守コストを最小化できる
  • コスト重視のライン:導入コストを抑えたい場合

キーエンスを選ぶケース

  • 新規ラインの立ち上げ:過去資産がないなら、使いやすい方を選べる
  • プログラム規模が大きい場合:プログラミング効率の差が大きく出る
  • トラブル対応の頻度が高い設備:モニタリングのしやすさが活きる
  • 納期が厳しい案件:既存取引先であれば供給が安定している
  • グローバル展開する工場・IoT化を進める現場:国際標準規格対応が強みを発揮する

5. よくある質問

「どちらを勉強すればいいですか?」

これから生産技術を目指す方には、まず三菱から入ることをおすすめします。

理由はシンプルで、求人・現場ともに三菱の経験を求めるケースが圧倒的に多いからです。三菱をマスターした後にキーエンスを学ぶと、比較しながら理解できるのでむしろ習得が早くなります。

「将来的にどちらが主流になりますか?」

正直なところ、当分は三菱が主流であり続けると思います。国内PLC市場では三菱電機が推定シェア50%以上を維持しており、既存設備の置き換えには数十年かかります。

ただ、個人的にはキーエンスが優勢になっていくという感覚があります。その根拠がEtherCAT・EtherNet/IPへの積極的な対応です。

キーエンスの最新機種KV-XシリーズはEtherCATとEtherNet/IPをCPUに標準搭載しています。この2つは世界中で使われる国際標準規格です。三菱のCC-Linkのような独自規格ではなく、世界中の機器と繋がれるオープンな設計になっています。

さらにOPC UAにも対応し、他社機器もケーブルをつないで機種を選ぶだけで設定完了できる「Universal Library」も搭載しました。

この戦略が意味することは2つです。

① 顧客を囲い込まない安心感 オープン規格を採用することで「キーエンスに縛られる」という不安を払拭しています。新規ライン導入の心理的ハードルが下がります。

② スマートファクトリー・IoT時代への備え 製造業のデジタル化が進むほど、オープンな通信規格への対応が重要になります。この点でキーエンスは三菱より先を行っている印象です。

現場の肌感覚としても、新規ラインでキーエンスを選ぶ現場は確実に増えています。「PLCといえば三菱」という時代は、じわじわと変わりつつあるのかもしれません。


6. まとめ

三菱とキーエンス、どちらが優れているという話ではありません。現場の状況に応じて使い分けることが大切です。

私自身、職場では三菱をメインに使いながら、個人的にはキーエンスのUIの直感性・デバッグのしやすさ・営業サポートの手厚さ・そして国際標準規格への積極対応に惚れ込んでいます。

デバイス番号の仕様など「三菱経験者が最初に感じる違和感」はありますが、慣れてしまえば気になりません。むしろその使いやすさに気づいたとき、キーエンスの良さが本当にわかると思います。

両方を経験することで、それぞれの強みと弱みが見えてくる。生産技術エンジニアとして、どちらも使いこなせることが理想です。

PLCの具体的な使い方については、別の記事で詳しく解説しています。あわせてどうぞ。


筆者:TKappy

関西在住の37歳、現役生産技術エンジニア。現場のトラブル対応からITスキルの活用まで、実体験に基づいた技術情報を発信中。 詳しく見る

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