【現場実体験】リレーのコイルサージ対策|PLC故障を防ぐ型式選定と配線の注意点

【現場実体験】リレーのコイルサージ対策|PLC故障を防ぐ型式選定と配線の注意点

カテゴリ: 電気・FA技術
タグ: 電気設計

「なぜかPLCが壊れる」「カウンタ表示がズレる…」。 その原因不明のトラブルは、実はリレーのサージ対策不足かもしれません。

実は私も新人時代、このサージ対策を甘く見て、キーエンスの高価な出力ユニットをお釈迦にした苦い経験があります。 「カチカチ動いているから大丈夫」と思っていた矢先、突然のユニット故障。サージの恐ろしさを骨身に染みて学びました……。

今回は、私のような失敗を繰り返さないために、サージ対策の重要性と、現場の定番オムロン製「MYリレー」 の正しい型式選定・配線の注意点について解説します。

1. なぜ「コイルサージ対策」が必要なのか?

リレーのコイルをOFFにした瞬間、逆起電力(サージ)が発生します。 コイルなどの誘導負荷は「電流を流し続けようとする性質」を持っているためで、供給電圧の10倍以上の高電圧が発生することもあります。

このサージを放置すると、以下のような実害が生じます。

  • PLC出力ユニットの破損: トランジスタが逆起電力(過電圧)に耐えられず、いずれ内部で絶縁破壊を起こして故障します。
    • ※私の経験では、三菱のPLCはキーエンスより保護がしっかりしている印象ですが、ダメージ蓄積により寿命が縮むのは同じです。
  • 電子機器の誤動作: 発生したノイズが信号線に乗り、パルスカウンタなどがデータ異常を引き起こします。私自身、切断長を計測する計測器がたまに狂うトラブルを経験しました。調査の結果、リレーコイルがOFFになるタイミングで誤カウントが発生していたことが原因でした。
  • 接点の寿命短縮: 火花放電(アーク)により接点が消耗・溶着しやすくなります。

💡 誘導負荷とは モーターや電磁弁、リレーのように、内部に巻線(コイル)を持っている部品のこと。電気を流すと磁力を発生させるため、今回の「サージ」を引き起こす張本人となります。

2. オムロン MYリレー「サージ対策付」型式の見分け方

「どのリレーを使うべきか」は、操作コイルの電源の種類で決まります。

電源の種類推奨型式(例)特徴・ポイント
DC(直流)MY4N-D2PLC出力保護用。 ダイオード付。極性あるので配線時は注意。
AC(交流)MY4N-CRノイズ・接点保護用。 CR回路付。
対策なしMY4N安価だがサージ対策なし。要注意。

古い設備の更新時、もし「対策なし」が使われていたら、サージ対策モデルへの置き換えを提案しましょう。外形寸法は同じなので、そのまま差し替え可能です。

3. DC用「-D2」の配線|逆接続は厳禁

DC用のダイオード内蔵タイプ(MY4N-D2)を使う際、コイルへの極性(+/-)を絶対に間違えないことが最重要の注意点です。

正しい接続

コイルの(+)端子にDC電源の+側、(-)端子に-側(PLCの出力コモン側)を接続します。この方向でダイオードが逆方向にバイアスされ、通常動作中は電流を通しません。コイルOFF時にのみ逆起電力を吸収します。

逆接続した場合

コイルの(+)/(-)を逆に配線してしまうと、ダイオードが順方向にバイアスされた状態になります。この状態でPLC出力をONにすると、内蔵ダイオードがショート状態となり、リレーだけでなくPLC出力ユニット(電源)も破損する可能性があります(オムロン公式FAQ No.02772に記載)。

⚠ 配線時のチェック習慣 DC用サージ対策リレーを配線したら、必ず導通テスターで極性確認を行ってから通電すること。後から気づくと出力ユニットごと交換になります。

DC用とAC用を間違えた場合

DC回路にAC用(MY4N-CR)を使っても逆接続ほどの即時破損はありませんが、CR回路はDC回路での吸収効率が低く、サージ対策として不十分になります。電源種別に合った型式を使うことが基本です。

4. 既設設備への対策|「外付けユニット」より「リレー置換」が現代の正解

「すでに対策なし(MY4N)が大量に使われている設備をどうにかしたい」という場面は現場でよくあります。 かつてはリレーとソケットの間に物理的に挟み込む専用の外付けサージ吸収ユニットが存在しましたが、現在はメインストリームから外れており、入手性もほぼありません。 現行品として流通していないため、新規設計での採用は非推奨です。

なぜ外付けユニットが廃れたか

理由はシンプルで、リレー本体へのサージ吸収機能内蔵が標準化されたからです。-CR-D2サフィックスのモデルが安価に入手できる現在、わざわざソケットとの間にユニットを挟む理由がなくなりました。スペース・工数・コストのすべてで一体型が有利です。

既設設備での推奨対応順

優先度アプローチ内容ポイント
① 推奨リレー本体の置換MY4NMY4N-D2(DC)またはMY4N-CR(AC)に差し替えソケットはそのまま活用可。費用対効果が最も高い
② 最終手段部品の並列配線汎用サージキラー(素子単体)をコイル端子に並列配線ユニット製品ではなく盤内配線作業として実装

💡 外付けユニットを探し回るのは非効率 ネットオークションや廃番在庫を探すコストをかけるより、現行の内蔵型リレーへの置換のほうが、後々の保守(故障時の入手性)を考えても圧倒的に有利です。まず「リレー置換」を基本戦略にしてください。

5. 三菱・キーエンスの出力ユニット保護回路の違い

私の実体験ベースの話になりますが、同じサージ環境下でもPLCメーカーによって故障しやすさに差があると感じています。

三菱 MELSECシリーズ(QシリーズやiQシリーズ等) は、トランジスタ出力ユニットにサージ保護素子(ツェナーダイオード等)が内蔵されているものが多く、サージへの耐性が比較的高い印象です。

キーエンス KVシリーズ は高機能・高速処理が強みの反面、出力ユニットの過電圧耐性が三菱に比べてシビアに感じる場面があります。私がお釈迦にしたのもキーエンスの出力ユニットでした。

ただし、これはあくまで私の経験上の印象であり、どちらのメーカーも「サージ対策なし」のリレーを使い続ければダメージは蓄積します。「三菱だから大丈夫」という判断は禁物です。

※メーカー仕様書に基づく比較ではなく、現場での経験談として参考にしてください。

6. 現場でのチェックポイントまとめ

  • 末尾の「D2」や「CR」を確認: これがなければサージ対策なし。
  • DC用は極性を必ず確認: 逆接続はリレー・電源の破損リスクあり(オムロン公式FAQ記載)。
  • 既設設備の対策: まずリレー本体の置換を優先。外付けユニット製品は現在ほぼ入手不可。
  • 古い設備の更新時: 「対策なし」を見つけたら置き換えを提案する習慣を。

まとめ:型式選定の鉄則

  • DC回路なら「-D2」(配線極性に注意)
  • AC回路なら「-CR」
  • 既設対策なし品の置換は「-D2」または「-CR」へのリレー差し替えが最優先

関連記事


tkappy

WRITTEN BY

TKappy

関西在住の生産技術エンジニア。PLCプログラミング、産業技術、ガジェットの知見を「TECH & ROOTS」として発信しています。詳しく見る

← 目次に戻る