PLCからRUN信号を出しているのにインバータが動かない。そんなときに最初に確認したいのがSTFとSTRです。
三菱電機のインバータFR-E800シリーズでは、外部運転の始動指令としてSTF・STRを使用します。設備を自動運転させる場合、ほとんどのケースでPLCからSTFまたはSTRへ運転指令を入力します。
ただし、STF・STRが正常でもPr.79(運転モード選択)が正しく設定されていないとインバータは運転しません。
この記事では、STF・STRの役割、SD端子との関係、PLCとの接続方法、シンク・ソースロジック、よくある配線ミスについて解説します。
STF・STRを30秒で理解する
STF・STRはインバータの運転方向を決める入力信号です。
| 端子 | 役割 |
|---|---|
| STF | 正転始動(Start Forward) |
| STR | 逆転始動(Start Reverse) |
| SD | 入力コモン |
| 入力状態 | 動作 |
|---|---|
| STF ON | 正転運転 |
| STR ON | 逆転運転 |
| STF OFF・STR OFF | 停止 |
| STF ON・STR ON | 始動しない(運転中は減速停止) |
STFが「正転で回れ」、STRが「逆転で回れ」というシンプルな運転指令です。
STF・STR・SDの関係
初めて配線するときに混乱しやすいのがSD端子です。FR-E800では、STFやSTR単体では入力が成立しません。入力コモンであるSDを基準に信号を入力します。
STF ── スイッチ ── SD → スイッチONで正転運転
STR ── スイッチ ── SD → スイッチONで逆転運転
PLCとの接続例
実際の設備ではPLCから制御することがほとんどです。
PLC Y0 → STF PLC COM → SD (Y0 ONで正転)
PLC Y1 → STR PLC COM → SD (Y1 ONで逆転)
現場でよく使う割付は「Y0=正転、Y1=逆転」です。コンベヤや搬送設備では定番の構成です。
STF・STRだけではモータは動かない
意外と勘違いされるポイントです。STF・STRが行うのは運転開始指令だけです。モータ速度は別の信号で決まります。
例えば、RH・RM・RL(多段速)、端子2(電圧入力)、端子4(電流入力)、PU設定などです。
STF → 運転指令
RH → 60Hz指定
という組み合わせで初めてモータが回ります。多段速運転については、以下の記事で詳しく解説しています。
シンクロジックとソースロジック
FR-E800は、シンクロジック(SINK)とソースロジック(SOURCE)の両方に対応しています。
シンクロジック:SDが入力コモンになります。一般的な国内設備でよく使用されます。
ソースロジック:PCが入力コモンになります。海外設備やPNP出力機器ではこちらを利用することがあります。
シンク・ソースが分からない場合は、まず取扱説明書と実機配線を確認してください。シンクロジック・ソースロジックはNPN・PNPと深い関係があります。詳しい配線例や回り込み回路については、以下の記事で解説しています。
STFとSTRを同時にONしてはいけない理由
FR-E800では、STF ONとSTR ONを同時に入力すると始動しません。運転中なら減速停止します。そのためPLC側でインターロックを組みます。
正転条件:AND NOT 逆転信号
逆転条件:AND NOT 正転信号
のようなラダーが一般的です。
⚠️ 要確認:STF・STR同時ON時の挙動(始動しない・減速停止する)は機種・パラメータ設定によって差異がある可能性があります。実際の設備では公式マニュアルで最終確認してください。
よくある配線ミス
間違い①:SDが接続されていない:STFに信号を送っていてもSD未接続では入力が成立しません。まずSDを確認しましょう。
間違い②:シンクとソースを間違えている:海外設備改造でよくあります。PNP機器なのにシンク設定のままだと正常に入力できません。
間違い③:STFとSTRを逆接続:意外とあります。正転のつもりが逆転した場合は配線とプログラムを確認しましょう。
STF入力しているのに動かない
現場で最も多いトラブルです。確認順序は以下がおすすめです。
①STF入力 → ②周波数指令 → ③Pr.79 → ④アラーム
配線に問題がない場合は、以下の記事の切り分け手順が参考になります。
私が現場で確認する順番
モータが動かないときは、
①STF入力 → ②STR入力 → ③SD接続 → ④周波数指令 → ⑤運転モード → ⑥アラーム
の順で見ます。多くの場合、STF未入力・SD接続ミス・周波数指令不足のどれかです。
まとめ
STF・STRはFR-E800の最も基本的な運転指令入力です。覚えておきたいポイントは次の5つです。
- STFは正転運転指令
- STRは逆転運転指令
- SDは入力コモン
- STFとSTRの同時ONは禁止
- STF・STRだけでは動かず周波数指令も必要
ここまで理解できれば、PLCからインバータを制御する基礎は十分です。次はPr.79(運転モード)、多段速運転(周波数指令)、トラブルシュートを学ぶと理解が深まります。