PLCからインバータを制御できるようになると、次に出てくるのが「運転中に速度を切り替えたい」という要望です。
例えば、搬送中は50Hz・位置決め時は10Hz・立上げ時は30Hzのように、運転速度を段階的に切り替えたいケースがあります。そんなときに使用するのが多段速運転です。
FR-E800シリーズでは、RH・RM・RLの入力信号を組み合わせることで、あらかじめ設定した周波数へ切り替えられます。
この記事では、多段速運転の仕組み、RH・RM・RLの役割、PLCとの接続、よくあるトラブルを現場目線で解説します。
多段速運転を30秒で理解する
多段速運転とは、あらかじめ登録した複数の周波数を入力信号で切り替える機能です。
RH OFF・RM OFF・RL OFF → 停止 または基本周波数
RH ON → 高速側の設定周波数
RM ON → 中速側の設定周波数
アナログ信号を使わずに速度変更できるため、PLC制御と相性が良い機能です。
多段速運転は何のために使うのか
現場では次のような用途で使われます。
- 搬送設備:通常搬送50Hz→停止位置付近10Hz
- 巻取り設備:立上げ20Hz→通常運転60Hz
- コンベヤ:製品サイズ別に低速・中速・高速を切替
PLCから簡単に速度変更できるため、多くの設備で採用されています。
RH・RM・RLとは?
FR-E800の標準設定では、以下の役割が割り当てられています。
| 端子 | 役割 |
|---|---|
| RH | 高速選択 |
| RM | 中速選択 |
| RL | 低速選択 |
これらの入力状態によって周波数が変わります。
多段速運転の考え方
例えば、以下のような設定を行います。
Pr.4 = 10Hz
Pr.5 = 30Hz
Pr.6 = 50Hz
すると、次のように動作します。
| 入力 | 周波数 |
|---|---|
| RL ON | 10Hz |
| RM ON | 30Hz |
| RH ON | 50Hz |
PLCとの接続例
PLC制御では、以下のように接続することが多いです。
Y0 → STF
Y1 → RL
Y2 → RM
Y3 → RH
Y0がONで運転開始、さらにY1〜Y3のいずれかをONすることで周波数が決まります(Y0のみONの場合は周波数指令なし=基本周波数での運転)。
STFと多段速の関係
ここは非常に重要です。RH・RM・RLだけではモータは回りません。
例えばRH ONだけでは「50Hzを選択した」だけです。実際に運転するには、STF(運転指令)とRH(周波数指令)の両方が必要です。
STFについては以下の記事で詳しく解説しています。
Pr.79との関係
多段速運転を使う場合、運転モードも重要です。一般的なPLC制御設備では、Pr.79=2を使用します。外部信号からSTF・RH・RM・RLを受け付ける設定です。
よくあるトラブル
RHをONしたのに速度が変わらない:まずPr.4〜6が設定されているか確認してください。速度設定が未設定の場合、期待した周波数になりません。
RH・RM・RLが全てOFF:この場合、Pr.1などの基本周波数設定が使用される場合があります。周波数指令の優先順位を確認しましょう。
STFは入っているのに回らない:確認順序は「①STF→②RH・RM・RL→③Pr.79→④アラーム」です。詳しい切り分け方法はこちらをご覧ください。
想定より速い速度で回る:よくある原因はRH・RM・RLが複数ONになっていることです。PLCラダーで同時出力が発生していないか確認してください。
私が現場で設計する場合
私がよく使う構成は「RL=10Hz、RM=30Hz、RH=50Hz」として、搬送開始時50Hz→位置決め時10Hzへ切り替えるパターンです。アナログ信号を使わずに実現できるため、配線もシーケンスもシンプルになります。
多段速運転とアナログ指令の違い
| 項目 | 多段速運転 | アナログ指令 |
|---|---|---|
| 配線 | 簡単 | やや複雑 |
| PLC制御 | 簡単 | 演算が必要 |
| 速度切替 | 段階式 | 連続可変 |
| コスト | 低い | やや高い |
搬送機やコンベヤのように、決まった速度しか使わない設備では多段速運転が非常に便利です。
まとめ
多段速運転は、あらかじめ登録した周波数を入力信号で切り替える機能です。覚えておきたいポイントは次の5つです。
- RH・RM・RLで速度を切り替える
- STFが無いと運転しない
- PLC制御との相性が良い
- Pr.79設定も重要
- 搬送設備やコンベヤでよく使われる
アナログ指令より簡単に速度変更できるため、PLCからインバータを制御する際に最初に覚えておきたい機能のひとつです。