PLCからRUN信号を出しているのにインバータが動かない。STF入力も入っているし、アラームも出ていない。
そんなときに真っ先に確認したいのが Pr.79「運転モード選択」 です。
Pr.79は、周波数指令をどこから受け取るか、始動指令をどこから受け取るかを決定する重要なパラメータです。
私は設備立上げや改造案件で、配線OK・PLC出力OK・STF入力OKなのにモータが回らないというトラブルに何度も遭遇しました。その原因がPr.79だったことは少なくありません。
この記事では、FR-E800のPr.79について現場目線で解説します。
Pr.79を30秒で理解する
Pr.79はインバータの運転モードを決めるパラメータです。具体的には、以下の組み合わせを決定します。
| 項目 | 入力元 |
|---|---|
| 周波数指令 | PU・外部端子・通信 |
| 始動指令 | PU・STF/STR・通信 |
設備で最もよく使う設定は Pr.79=2(外部運転モード固定) です。PLCからSTF・STRで運転する設備の多くがこの設定になっています。
PU運転・外部運転・NET運転とは?
Pr.79を理解する前に、まず運転モードを整理しておきます。
PU運転
操作パネル(PU)から運転します。RUNキーでの起動・周波数設定ができ、点検や試運転向けです。
外部運転
PLCや外部信号から運転します。代表例はSTF・STR・RH・RM・RLです。設備では最も一般的な運転方法です。
NET運転
通信経由で運転します。例としてEthernet・RS-485・CC-Linkなどがあります。
Pr.79設定一覧
Pr.79=0(初期値):外部/PU切換モード
初期設定です。PU運転、外部運転、NET運転を切り換えて使用できます。
操作パネルの [PU/EXT]キー を押して運転モードを切り換えます。
| 表示 | 内容 |
|---|---|
| PU | パネル運転 |
| EXT | 外部運転 |
| NET | ネットワーク運転 |
例えばPLCから運転したい場合は、EXT表示にする必要があります。
Pr.79=1:PU運転モード固定
| 項目 | 入力元 |
|---|---|
| 周波数指令 | PU |
| 始動指令 | PU |
試運転や単体確認向けです。
Pr.79=2:外部運転モード固定
| 項目 | 入力元 |
|---|---|
| 周波数指令 | 外部信号 |
| 始動指令 | STF・STRなどの外部信号 |
PLC制御設備で最もよく使用される設定です。
Pr.79=3:外部/PU併用運転モード1
| 項目 | 入力元 |
|---|---|
| 周波数指令 | PUまたは外部 |
| 始動指令 | 外部信号 |
保全中に周波数だけ操作パネルから変更したい場合に便利です。
Pr.79=4:外部/PU併用運転モード2
| 項目 | 入力元 |
|---|---|
| 周波数指令 | 外部信号 |
| 始動指令 | PU |
使用頻度は比較的少なめです。
Pr.79=6:スイッチオーバーモード
PU運転と外部運転を運転継続中に切り換えることができます。停止できない設備の調整時に便利です。
Pr.79=7:外部運転モード(PU運転インタロック)
外部運転を基本としながら、X12信号でPU運転モードへの移行を制御するモードです。誤操作防止を重視する設備で使用されます。
- X12信号ON:PU運転モードへ移行可能(外部運転中は出力停止)
- X12信号OFF:PU運転モードへ移行禁止(外部運転モードへ強制的に切り換え)
X12信号を使用するには、Pr.178〜184(入力端子機能選択)のいずれかの端子に設定値「12」を割り付ける必要があります。X12信号が割り付けられていない場合、MRS信号(出力停止)の機能がPU運転インタロック信号に切り換わる点にも注意してください。
この機能により、外部指令での運転中にPU運転モードへの切り換え忘れでインバータが動作しない、という現象を防止できます。
よくあるトラブル①:PLCから運転できない
現場で最も遭遇するトラブルです。
PLC出力ON → STF入力ON → モータが回らない
この場合は、①STF入力 → ②STR入力 → ③Pr.79 → ④現在の運転モード、の順で確認します。
原因①:PUモードになっている
Pr.79=0の場合、現在の運転モードは操作パネル表示で決まります。PU表示の場合、STF信号を入力しても運転しません。
対処方法:PU/EXTキーでEXT表示へ変更します。
原因②:Pr.79=1になっている
Pr.79=1はPU運転固定です。この状態では外部入力を受け付けません。設備用途ならまずPr.79=2を確認しましょう。
よくあるトラブル②:パラメータ変更ができない
立上げ中に非常によく遭遇します。
Pr.79を変更 → 別のパラメータを設定 → 書込みできない
という現象です。
原因はPr.77の可能性が高い
この場合はPr.79ではなく、 Pr.77「パラメータ書込選択」 が原因であることが多いです。Pr.77には3つの設定値があります。
| Pr.77設定値 | 内容 |
|---|---|
| 0(初期値) | 停止中のみ書込み可能 |
| 1 | パラメータの書込みはできない(読出しのみ可能) |
| 2 | 全ての運転モードで運転状態にかかわらず書込み可能 |
初期値のPr.77=0では、PU運転モードで停止中のみパラメータの書込みができます。ただし、多段速設定(Pr.4〜6)やストール防止動作レベル(Pr.22)など一部のパラメータは、運転モード・運転状態に関わりなく常時書込み可能です。
Pr.77=1に設定すると、パラメータの書込み・パラメータクリア・パラメータオールクリアが一切できなくなります(読出しのみ可能)。誤操作防止を徹底したい設備の引渡し後などに使われる設定です。
なぜ書込みできないのか
例えばPr.79=2に設定すると、外部運転モード固定になります。その状態でPr.77が初期値のままだと、パラメータ変更が禁止されます。
そのため「キーパッド故障?」「通信異常?」「インバータ異常?」と勘違いすることがあります。しかし実際は正常動作です。
対処方法①:PU運転へ切り換える
Pr.77が初期値の場合は、PU/EXTキーでPU表示にしてからパラメータを変更します。
対処方法②:Pr.77を「2」に変更する
立上げや試運転中は、Pr.77=2に設定しておくと便利です。この設定では運転モードに関係なくパラメータ変更が可能になります。
ただし、Pr.77=2でも全てのパラメータが運転中に変更できるわけではありません。モータ制御方法選択(Pr.79含む)・モータ容量(Pr.80)・モータ定数関連など、モータ停止中のみ変更可能なパラメータが多数あります。
そのため「Pr.77=2なのに書込みできない」場合は、まずモータを停止して再度書込みを試してください。
私も立上げ時に、Pr.77=2に設定してパラメータ変更を試みたところ書込みエラーが発生し、モータを停止してから再度試したところ正常に書き込めた、というケースを何度も経験しています。特に運転モードや保護機能に関するパラメータは、安全上の理由から停止中しか変更できないものがあります。
私のおすすめ運用
立上げ期間中はPr.77=2、設備引渡し時はPr.77=0に戻しています。誤設定による設備トラブルを防ぎやすいためです。誤操作を特に警戒したい設備では、引渡し後にPr.77=1へ変更し、書込み自体を完全に禁止する運用も選択肢になります。
私が現場で使い分けているPr.79設定
設備運転:Pr.79=2(外部運転固定)。PLC制御設備では最も管理しやすい設定です。
立上げ期間:Pr.79=0(外部/PU切換モード)。試運転と調整がしやすくなります。
保全設備:Pr.79=3(外部/PU併用運転モード1)。周波数だけ現場で変更したい場合に便利です。
まとめ
Pr.79はFR-E800の運転モードを決める重要パラメータです。覚えておきたいポイントは次の6つです。
- Pr.79は周波数指令と始動指令の入力元を決める
- 設備運転ではPr.79=2が最も一般的
- Pr.79=0ではPU/EXTキーで運転モードを切換できる
- PLCから運転できない場合はPr.79と現在の運転モードを確認する
- パラメータ変更できない場合はPr.77も確認する
- Pr.77=2でも停止中しか変更できないパラメータがある
私はインバータのトラブル対応時、
Pr.79 → 運転モード(PU/EXT) → STF入力 → 周波数指令 → Pr.77
の順で確認しています。地味なパラメータですが、現場では最重要クラスの設定のひとつです。
