三菱PLCやキーエンスPLCを使った設備では、モータを直接制御するのではなく、インバータを介してモータを動かす構成が一般的です。
しかし、若手エンジニアや設備保全担当者の方から、
- PLCからどうやってインバータを動かすの?
- RUN信号と周波数指令の違いは?
- 多段速運転とアナログ制御は何が違う?
- 周波数は何Hzまで設定できるの?
といった質問を受けることが少なくありません。この記事では、現場で最もよく使われるインバータ制御の基本について、初心者向けにわかりやすく解説します。
PLCとインバータの役割
まずはそれぞれの役割を整理しておきます。
PLC
↓ 運転指令
インバータ
↓ モータの回転速度を制御
モータ
↓ 実際に回転する
PLCは設備全体を制御する司令塔です。一方、インバータはモータへ供給する電圧や周波数を調整し、回転速度を制御する装置です。
PLCが直接モータを駆動するのではなく、PLCが指令を出し、インバータがモータを動かすと考えると理解しやすいでしょう。
インバータ制御に必要な2つの信号
PLCからインバータを制御するためには、基本的に次の2つの信号が必要です。
RUN信号
RUN信号は、動け・止まれを指示する信号です。三菱インバータであれば代表的な端子として、STF(正転)・STR(逆転)があります。例えばPLCの接点出力でSTF端子をONすると、モータが正転を開始します。
周波数指令
RUN信号だけではモータの回転速度は決まりません。そこで必要になるのが周波数指令です。例えば10Hz・30Hz・50Hzといった指令値を与えることで、モータの回転速度を変更できます。
RUN = ON, 周波数 = 30Hz → 30Hzで運転
RUN = OFF → 停止
RUN信号が「運転するかどうか」、周波数指令が「どの速度で回転するか」を決めています。
周波数指令は何Hzまで入力できる?
インバータの速度は周波数指令によって決まります。例えば4極モータの場合、60Hz→約1800rpm、30Hz→約900rpm、10Hz→約300rpmとなり、周波数を下げるほど回転速度も低下します。
設定できる範囲は、インバータの上限周波数(Pr.1)と下限周波数(Pr.2)によって決まります。FR-Eシリーズでは、Pr.1で最高周波数、Pr.2で最低周波数を設定できます。
上限周波数
Pr.1=60Hzの場合、0Hz〜60Hzの範囲で運転できます。初期値は120Hzですが、多くの設備ではモータ定格に合わせて50Hzまたは60Hzに設定して使用します。
60Hzを超える運転も可能ですが、モータの許容回転数・ベアリング寿命・機械強度・共振への影響を確認する必要があります。「とりあえず速くしたいから周波数を上げる」という調整は故障の原因になるため注意しましょう。
下限周波数
下限周波数はPr.2で設定します。Pr.2=10Hz・Pr.1=60Hzの場合、10Hz〜60Hzの範囲で運転します。コンベアや搬送設備では、不要な超低速運転を防ぐため10〜20Hz程度に設定することがよくあります。
低速運転で注意したいこと
高周波運転に目が向きがちですが、現場では低速運転の方が問題になることがあります。
一般的な三相誘導モータは軸に取り付けられた冷却ファンで自己冷却しています。そのため、周波数低下→回転数低下→冷却風量低下→モータ温度上昇という現象が発生します。
特に1Hz・2Hz・5Hzのような超低速で長時間運転する場合は注意が必要です。標準モータでは10Hz未満の連続運転で発熱が問題になることがあります。
インバータ用モータなら大丈夫?
「インバータ用モータだから低速でも問題ない」と思われがちですが、一概には言えません。インバータ用モータでも、低速特性を改善したタイプ・強制冷却ファン付きタイプなど様々です。
特に強制冷却ファン付きモータは、モータ回転数に関係なく冷却できるため低速運転に有利です。ただし、許容周波数範囲・定トルク範囲・連続運転可能範囲はモータごとに異なります。低速運転を常用する場合は、モータメーカーの仕様を確認しましょう。
最も一般的な制御方法
現場で最も多く採用されているのが、RUN信号+アナログ出力による制御方式です。
PLC接点出力 → STF端子
PLCアナログ出力(0〜10V) → インバータ → モータ
例えば0V→0Hz、5V→30Hz、10V→60Hzのように対応付けて速度を制御します。
メリット:構成がシンプル・多くのインバータで利用可能・PLCメーカーを問わない
デメリット:アナログ配線が必要・ノイズの影響を受けやすい
多段速運転という方法もある
アナログ出力を使わずに速度を切り替えたい場合は、多段速運転を利用します。例えばRL→10Hz、RM→30Hz、RH→50Hzというように、入力端子の組み合わせで速度を切り替えます。
メリット:アナログユニット不要・PLCの接点出力だけで制御可能・配線が簡単
デメリット:速度を細かく変更できない・設定可能な速度が固定
コンベアや搬送装置のように、低速・通常速度・高速程度の切り替えしか必要ない設備では非常によく使われます。詳しいパラメータ設定は下記の記事をご覧ください。
通信で制御する方法
近年は通信によるインバータ制御も増えています。
PLC ⇔ Ethernet ⇔ インバータ
通信制御では、起動・停止・周波数変更・電流監視・アラーム取得などをまとめてやり取りできます。
メリット:配線本数を削減できる・モニタ機能が充実する・多数台の管理がしやすい
デメリット:通信設定が必要・初期導入の難易度が高い
設備の大規模化に伴い、通信制御を採用する案件は年々増えています。
初心者にはどの方式がおすすめ?
私が新人に説明する際は、まず次の優先順位を伝えています。
- 接点出力+アナログ出力:最も基本となる方式です。まずはこの構成を理解すると、ほぼすべての設備で応用が効きます
- 多段速運転:小規模設備では非常に便利です。アナログユニットが不要なため、コストを抑えられます
- 通信制御:今後必須になる技術ですが、まずは接点制御の原理を理解してから取り組むことをおすすめします
RUN信号を出しているのに動かない時の確認ポイント
Pr.79の設定:意外と多いのが運転モード設定ミスです。試運転後にパラメータを戻し忘れていたり、運転指令元がパネル側になっていたりするケースがあります。まずはPr.79を確認しましょう。
非常停止回路:非常停止回路が開いている場合、いくらPLCから信号を出しても運転できません。制御回路全体を確認してください。
配線ミス:STFとSDの接続ミスなど、基本的な配線不良もよく発生します。まずはテスターで信号を確認するのがおすすめです。
より詳しい切り分け手順は下記の記事で解説しています。
周波数が変わらない時の確認ポイント
よくある原因は次の3つです。
- アナログ配線ミス
- アナログ出力設定ミス
- 周波数指令元設定ミス
RUNはできるのに速度だけ変わらない場合は、周波数指令系統を重点的に確認しましょう。
まとめ
PLCからインバータを制御する際に覚えておきたいポイントは次の通りです。
- インバータ制御にはRUN信号と周波数指令が必要
- RUN信号は運転・停止を決める
- 周波数指令は回転速度を決める
- 周波数の使用範囲はPr.1(上限)とPr.2(下限)で設定する
- 標準モータでは超低速運転時の発熱に注意が必要
- 最も一般的な方式は「接点出力+アナログ出力」
- 通信制御は配線削減や監視機能に優れる
- 動かない場合はPr.79や配線を最初に確認する
インバータのパラメータ設定については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
