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三菱電機のインバータ「FR-Eシリーズ」は、FA現場で最もよく見かけるインバータのひとつです。コンパクトながら必要な機能が揃っており、コンベアやポンプ、ファンの速度制御に広く使われています。
この記事では、FR-E700・FR-E800を初めて使う方に向けて、現場で実際に設定する基本パラメータに絞って解説します。マニュアル全体を読み込まなくても、まずここを押さえれば動かせる、という内容を目指しています。
私自身、生産技術エンジニアとして制御盤の設計・配線・試運転を担当する中でFR-Eシリーズを繰り返し使ってきた経験をもとに書いています。
FR-Eシリーズの概要
FR-Eシリーズは三菱電機のインバータラインナップの中で、小容量・低コスト向けのエントリーモデルに位置します。
| 項目 | FR-E700 | FR-E800 |
|---|---|---|
| 容量範囲 | 0.1〜7.5kW | 0.1〜15kW |
| 通信機能 | オプション(RS-485等) | 標準搭載(CC-Link IE TSN等) |
| 安全機能 | 基本的なもの | STO機能対応 |
| 現場での位置づけ | スタンダードモデル | 後継・高機能モデル |
FR-E800はFR-E700の後継機にあたり、通信機能や安全規格への対応が強化されています。基本的なパラメータの考え方・番号・動作仕様はほぼ共通ですが、FR-E800は新機能の追加によりパラメータの総数が多くなっています。両機種の差異がある箇所はその都度補足します。
パラメータ設定の前に確認すること
インバータのパラメータを変更する前に、必ず以下を確認してください。
①電源・モータの仕様確認
インバータの入力電圧(単相200V/三相200V等)とモータの定格(電圧・電流・周波数)が一致していることを確認します。
②配線の確認
主回路(R/S/T→インバータ→U/V/W→モータ)と制御回路(起動信号・周波数指令)の配線が正しく完了していること。
③初期化の検討
中古品や使い回し品の場合、パラメータが変更されている可能性があります。Pr.ALLC(全パラメータクリア)またはPr.PLCL(PLCパラメータクリア)で初期化してから設定を始めると確実です。
マニュアルと併用すると理解が深まる参考書です。
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基本パラメータ一覧
現場でまず設定する主要パラメータをまとめます。
| Pr.番号 | 名称 | 初期値 | 設定のポイント |
|---|---|---|---|
| Pr.1 | 上限周波数 | 120Hz | モータの最高回転数に合わせて設定。通常50Hzまたは60Hz。 |
| Pr.2 | 下限周波数 | 0Hz | 最低回転数の制限が必要な場合に設定。 |
| Pr.3 | ベース周波数 | 60Hz | モータの定格周波数に合わせる(50Hzモータなら50Hz)。 |
| Pr.7 | 加速時間 | 5s | 0Hzから上限周波数までの加速時間。負荷に応じて調整。 |
| Pr.8 | 減速時間 | 5s | 上限周波数から0Hzまでの減速時間。慣性の大きい負荷は長めに。 |
| Pr.9 | 電子サーマル | モータ定格電流 | モータの定格電流値を入力する。過負荷保護に直結するため必ず設定。 |
| Pr.19 | ベース周波数電圧 | 9999 | 9999のままでほぼ問題なし(電源電圧を自動参照)。 |
| Pr.79 | 運転モード選択 | 0 | 運転指令と周波数指令の入力元を決める最重要パラメータ。後述。 |
Pr.79「運転モード選択」の設定
現場で最もよく変更するパラメータがこのPr.79です。運転指令(起動・停止)と周波数指令(速度)をどこから入力するかを決めます。
| 設定値 | 運転指令 | 周波数指令 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 0 | 外部端子 | 外部端子(アナログ等) | PLC連携の標準的な使い方 |
| 1 | 外部端子 | 操作パネル | 現場で手動調整しながら運転 |
| 2 | 操作パネル | 操作パネル | 単体テスト・試運転時 |
| 3 | 外部端子 | 外部端子(多段速) | 多段速運転(後述) |
| 4 | 操作パネル | 外部端子 | ほぼ使わない |
試運転の手順としては、まずPr.79=2で単体動作を確認し、その後PLCと接続してPr.79=0または3に変更するという流れが安全です。
多段速運転の設定(Pr.4〜Pr.6)
複数の速度を切り替えて使う「多段速運転」もよく使う機能です。
| Pr.番号 | 名称 | 初期値 |
|---|---|---|
| Pr.4 | 多段速設定(高速) | 50Hz |
| Pr.5 | 多段速設定(中速) | 30Hz |
| Pr.6 | 多段速設定(低速) | 10Hz |
外部端子のRH・RM・RLの組み合わせで速度を切り替えます。Pr.79=3に設定した上で使用します。
FR-E700・FR-E800ともに最大15速まで設定できます。RH・RM・RL・REXの端子組み合わせによる切り替え方式、および使用するパラメータ(Pr.4〜6、Pr.24〜27、Pr.232〜239)は両機種で共通です。
Pr.160「拡張機能表示選択」について
FR-E700・FR-E800ともにPr.160の設定ルールは共通です。
| Pr.160の値 | 表示されるパラメータ |
|---|---|
| 9999(初期値) | 基本パラメータおよび一部のパラメータのみ |
| 0 | シンプルモードパラメータのみ |
| 1 | 全パラメータを表示 |
詳細な設定・確認をする際はPr.160=1に変更してから作業します。なお、FR-E800はFR-E700より新機能が多い分、Pr.160=1にした際に表示されるパラメータの総数が多くなります。目的のパラメータをすぐ見つけたい場合はマニュアルの索引を活用してください。
アラームとトラブルシュート
現場でよく発生するアラームと対処法をまとめます。
| アラームコード | 名称 | 主な原因 | 対処 |
|---|---|---|---|
| E.OC1 | 加速中過電流 | 加速時間が短すぎる/負荷が重い | Pr.7(加速時間)を長くする |
| E.OC2 | 定速中過電流 | 過負荷/モータ異常 | 負荷を確認、Pr.9の設定値を見直す |
| E.OC3 | 減速中過電流 | 減速時間が短すぎる | Pr.8(減速時間)を長くする |
| E.OV1 | 加速中過電圧 | 電源電圧の変動 | 電源を確認する(検出閾値:200Vクラス約400VDC/400Vクラス約800VDC) |
| E.OV2 | 定速中過電圧 | 電源電圧が高い | 電源電圧を確認する |
| E.OV3 | 減速中過電圧 | 慣性負荷が大きく回生電圧が上昇 | Pr.8(減速時間)を長くする、または制動抵抗を追加 |
| E.THM | 電子サーマル動作 | 過負荷継続 | 負荷を軽減、Pr.9の設定値を確認 |
| E.FIN | 冷却フィン過熱 | 周囲温度が高い/通風不良 | 設置環境を改善する |
E.OV1の検出条件(ハードウェア的な閾値)はFR-E700・FR-E800で共通です。インバータ内部の主回路直流電圧(P-N間電圧)が規定値(200Vクラスで約400VDC、400Vクラスで約800VDC)を超えた場合に遮断されます。加速中に電源電圧が不安定な場合に発生することがあるため、まず電源側を確認してください。
パラメータ設定の手順まとめ
実際の試運転手順を簡単にまとめます。
- 初期化(必要な場合):Pr.ALLCで全パラメータクリア
- モータ定格の入力:Pr.3(ベース周波数)・Pr.9(電子サーマル)を設定
- 加減速時間の設定:Pr.7・Pr.8を負荷に合わせて設定
- 運転周波数の設定:Pr.1(上限周波数)を設定
- 運転モードの選択:Pr.79=2でパネル操作モードに設定
- 単体テスト:パネルから起動して正転・逆転・周波数変化を確認
- 外部接続モードへ切替:Pr.79=0または3に変更してPLCと接続
- 連動テスト:PLCからの信号で正常に動作することを確認
まとめ
FR-Eシリーズの基本パラメータ設定で、まず押さえるべきポイントをまとめます。
- Pr.3(ベース周波数)とPr.9(電子サーマル)はモータ定格に合わせて必ず設定する
- Pr.79(運転モード)は試運転時に最もよく変更するパラメータ
- 試運転はPr.79=2(パネル操作モード)から始めるのが安全
- アラーム発生時はまず**加減速時間(Pr.7・Pr.8)と電子サーマル(Pr.9)**を確認する
FR-Eシリーズはシンプルな機械でも奥が深く、現場ごとに最適な設定は異なります。本記事をベースにしながら、実際の負荷特性に合わせて調整してみてください。
試運転や日常点検で使えるクランプメーターも合わせてご紹介します。
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