本記事にはアフィリエイトリンクが含まれています。
「電力は範囲が広すぎて、どこから手をつければいいかわからない……」
そう感じている受験生は多いはずです。しかし、実は電力科目こそ 「出題パターンの固定化」 が最も進んでいる科目だということをご存知でしょうか。
私は電気技術者試験センターが公開している令和5年度上期〜令和7年度下期(2026年3月)の直近6回分の全問題を徹底分析しました。CBT方式・年2回実施となった新制度下の傾向を踏まえ、効率的に合格ラインの60点を超えるための「戦略的学習法」を提案します。
結論から言えば、 「5つの計算パターンを完璧にし、頻出知識を暗記する」 。これだけで合格はぐっと引き寄せられます。
📖 この記事の使い方 最初から通読するより、苦手なパターンだけ開いて公式・注意点を確認する辞書的な使い方が合っています。試験前日の最終確認にも活用してください。ある程度学習が進んだ方を想定しているため、各公式の導出は省略しています。
1. 電力科目の「構造」
電力科目は、理論や機械と異なり「暗記」の比重が高いのが特徴です。しかし、合格を確実にするのは配点の高い計算問題です。
📊 配点構造:知識7割・計算3割の真実
計算問題は問数こそ少ないですが、B問題に集中しているため、ここを落とすと致命傷になります。
| 形式 | 問数 | 配点(目安) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 知識問題 | 約11問 | 約55〜60点 | 広範囲だがキーワードは固定 |
| 計算問題 | 約6問 | 約40〜45点 | パターンが固定。満点を狙える |
🎯 B問題(30点分)が合否を分ける
問15・16・17のB問題は1問10点。ここを完答するだけで合格点の半分を確保できます。
2. 最重要計算パターン5選(直近6/6回的中)
分析の結果、以下のテーマはほぼ毎回同じ形式で出題されています。これらは「解き方」をアルゴリズムとして脳内に実装しておきましょう。
① 電線のたるみ計算(問12固定)
架空電線の弧の長さと張力のバランスを問う問題です。径間・荷重・張力の3つを整理してから式に当てはめると計算ミスが防げます。
$$D = \frac{WS^2}{8T} \quad [\text{m}]$$| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| $D$ | たるみ(弛度) | m |
| $W$ | 電線1m当たりの合成荷重 | N/m |
| $S$ | 径間 | m |
| $T$ | 水平張力 | N |
【注記】 $W$ は自重だけでなく、氷雪荷重や風圧荷重を加味した「合成荷重」となる場合があるため、問題文の条件をよく確認してください。
② 電圧降下・電力損失計算(問13固定)
三相3線式の特性を理解しているかが問われます。「三相」か「単相2線式」かで係数が変わるため、回路方式を最初に確認する習慣をつけましょう。
$$\Delta V = \sqrt{3} I (R \cos \theta + X \sin \theta) \quad [\text{V}]$$$$P_L = 3 I^2 R \quad [\text{W}]$$| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| $\Delta V$ | 電圧降下(送受電端の線間電圧差) | V |
| $I$ | 線電流 | A |
| $R$ | 1線当たりの抵抗 | Ω |
| $X$ | 1線当たりのリアクタンス | Ω |
| $\cos \theta$ | 力率 | — |
| $P_L$ | 三相の線路損失 | W |
前提条件: この電圧降下の式は、送受電端の相差角が十分に小さいと仮定した近似式です。実務的・試験的にはこの式がデファクトスタンダードです。
③ 水力発電の出力計算(B問題 問15)
エネルギー変換効率の計算です。「有効落差」と「総落差」を混同しないことが得点の分かれ目になります。
$$P = 9.8 Q H \eta \quad [\text{kW}]$$| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| $P$ | 発電機出力 | kW |
| $Q$ | 流量 | m³/s |
| $H$ | 有効落差 | m |
| $\eta$ | 水車と発電機の総合効率 | — |
【注記】 有効落差 $H$ は「総落差 $-$ 損失水頭」で算出します。単位が $[\text{kW}]$ であることに注意してください。
④ 火力発電の効率と $\text{CO}_2$ 排出量(B問題 問15)
熱サイクルと化学反応の知識を組み合わせます。効率の式と $\text{CO}_2$ 排出量の式は別々に覚えておくと、どちらか一方が問われても対応できます。
$$\eta = \frac{P \times 3600}{B \times H_f} \times 100 \quad [\%]$$| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| $\eta$ | 発電効率 | % |
| $P$ | 発電出力 | kW |
| $B$ | 燃料消費量 | kg/h |
| $H_f$ | 燃料の発熱量 | kJ/kg |
$\text{CO}_2$ 排出量計算のコツ: 炭素の燃焼 $\text{C} + \text{O}_2 \rightarrow \text{CO}_2$(分子量比 $12:44$)
$$\text{排出量} = \text{燃料消費量} \times \text{炭素含有率} \times \frac{44}{12}$$⑤ %インピーダンス・短絡電流(B問題 問16)
電力系統の保護計算の基本です。複数の機器が混在する問題では、基準容量への換算を忘れた時点で計算がすべて狂います。換算を最初のステップとして習慣化しましょう。
$$I_s = \frac{100}{Z_p} \cdot I_n \quad [\text{A}]$$| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| $I_s$ | 短絡電流 | A |
| $Z_p$ | パーセントインピーダンス(%Z) | % |
| $I_n$ | 定格電流 | A |
⚠️ 鉄則: 異なる容量の機器(変圧器や発電機)が混在する場合、必ず共通の基準容量(例:10MVAなど)に換算してから合成してください。
3. 知識問題の頻出キーワード集
知識問題は深追いせず、以下のキーワードと「正誤のポイント」をセットで押さえましょう。
📖 発電・変電・送配電の要点
| 分野 | 頻出項目 | 攻略のツボ |
|---|---|---|
| 水力 | 比速度 | 相似な水車の回転数。ペルトン(小)<フランシス<カプラン(大) |
| 変電 | GIS | SF6ガスを使用。コンパクト・密閉・保守性向上 |
| 送電 | 振動対策 | 微風振動にはダンパ、ギャロッピングにはスペーサ |
| 配電 | フェランチ効果 | 軽負荷時に受電端電圧が上昇。対策は分路リアクトル投入 |
| 材料 | SF6ガス | 無色・無臭・不燃。温暖化係数が高いため排出抑制が必要 |
4. 合格へのチェックリスト(まとめ)
エンジニアらしく、論理的に点数を積み上げましょう。
- 計算40点を確保: 上記5パターンを何も見ずに解けるか?
- B問題問17(配電線路): ベクトル和(有効・無効成分の分離)を正しく行えるか?
- 公式の単位系: $\text{kW}$ と $\text{W}$、$\text{kJ}$ と $\text{J}$ の変換でミスをしていないか?
- 知識問題の消去法: 明らかな誤り(例:「CTの二次側を開放する」など)を瞬時に見抜けるか?
アドバイス: 電力科目は計算問題の「型」が決まっているため、理論科目に比べて努力が点数に直結しやすい科目です。計算で40点を死守すれば、知識問題で半分正解するだけで合格圏内に入ります。「計算から逃げないこと」が、実は最も楽な合格法です。
理論・機械・法規の傾向分析もあわせてどうぞ。
※ この記事は試験センター公式サイト(https://www.shiken.or.jp)で公開されている過去問PDFをもとに作成しています。出題傾向は今後変わる可能性があります。
関連記事
みんなが欲しかった! 電験三種 電力の教科書&問題集 第3版
